大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36年(オ)106号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告代理人由布喜久雄の上告理由第一点について。

農地法六条五項の規定に関する原審の解釈は正当であり、これと、原判決及びその引用に係る第一審判決に示された原審確定の事実関係との下においては、原審が、上告人等の所論耕作は、昭和三一年以降、もはや平穏かつ公然のものといえなくなつたのであつて、その耕作のなされて居る本件土地は、同条同号所定の看做小作地とすべき要件を欠くに至つたものであるとの趣旨の判断をしたことも亦、正当である。而して、論旨引用の判例は、事案を異にする本件には適切でない。

論旨は、要するに、本件土地を以つて看做小作地であるとする前提に立つものであつて、原判決を正解しない所から出て居るか或は原判決と相容れない独自の見解に立つて原判決を非難するものであるに帰着する。

論旨は、理由がない。

同第二点について。

所論許可申請書に、本件土地を被上告人寒田祐英の自作地と記載せられて居り、所論許可書には、その点につき何等の記載がないからといつて、経験則上、福岡県知事が、本件土地を同被上告人の自作地であると認め、これを前提として所論許可を行つたものと認定せねばならないものではない。却つて、原審は、証拠上、同県知事において、本件土地を同被上告人の自作地であると認めた上右許可処分をしたものであることを否定し、原判決挙示の証拠により、同県知事においては、本件土地を現に上告人等が不法耕作をして居る農地であると認めた上、右許可処分を行つたものであるとの事実を認定し、同許可処分は無効でない旨判断して居るのである。右認定判断は正当として是認し得られるのであつて、これに所論の違法はない。

論旨は、畢竟、原審の専権に委ねられた証拠の判断、事実の認定を非難し、原判決と相容れない独自の見解に立つて原判決を攻撃するに外ならないものであつて、これを採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、九三条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 五鬼上堅磐)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例